薬事申請(RA)転職ガイド 薬事申請とは

「医薬品を必要とする患者さんに、一秒でも早く届ける」
そのために少しでも早く承認を受けられるよう、スピード感をもって慎重に業務にあたることが薬事に関わる職種に課せられた使命です。諸外国に比べて承認申請に時間がかかるといわれている日本において、生じているドラッグ・ラグの問題と対応について改めておさえておきましょう。

ドラッグ・ラグとは

2012年9月、多くの保護者が待ち望んでいた1つのワクチンが定期接種に指定されました。そのワクチンはポリオ(小児まひ、急性灰白髄炎)の不活化ワクチンです。それまで指定されていた生ワクチンは、注射をしなくてよいことや値段が安いというメリットもありましたが、経口ワクチンを赤ちゃんがしっかりと飲み込めたか、また生ワクチンであることから接種後赤ちゃんの様子を注意深く見守るのはもちろん、まれであるとはええ、生ワクチンであるがゆえにワクチンを飲んだ赤ちゃんのみならず糞便の処理にあたる保護者等も小児まひが起こるリスクがあるという大きなデメリットがあります。
そこで、日本と同様に野生のポリオウイルスの流行していない諸外国の国々では、1990年代後半から、ワクチンによる小児まひが絶対に起こらない不活化ワクチンへの切り替えがすすみましたが、日本においてはなかなか進みませんでした。そのため、安全なワクチンを求める保護者たちが全額自己負担となる不活化ワクチンを輸入し対処してくれる医療機関の情報を求めたり、ワクチンの切り替えを求める署名活動を展開するなどの動きがありました。
このように、海外では承認され使用されている薬剤が日本では未承認のため保険適用されない・発売されない、また発売までに要した時間が他の国よりも長くかかる状態をドラッグ・ラグと呼ばれています。
製薬企業に課せられた使命の一つに、「医薬品を必要とする患者さんに、一秒でも早く届ける」というものがあります。そしてその任を託されているのが薬事に関わるエキスパート職なのです。

H22年度H23年度H24年度H25年度H26年度
開発ラグ※11.3年(1.0年)1.5年(0.4年)0.3年(0年)1.0年(0.3年)1.1年(0.6年)
審査ラグ※10.4年0.1年0年0.1年0年
ドラッグ・ラグ※11.7年(1.4年)1.6年(0.5年)0.3年(0年)1.1年(0.4年)1.1年(0.6年)

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(https://www.pmda.go.jp/files/000212800.pdf)より

医薬品の承認審査等を行っている独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(以下PMDA)によると、新有効成分含有医薬品における米国とのドラッグ・ラグの状況は、審査ラグは平成23年以降ほぼ0に近い水準を維持しているが、開発ラグに関しては年によって変動がみられたと報告されています。このため、PMDAでは、①開発ラグ解消支援のため、相談業務を適切に実施していく②必要な体制強化を行い、審査の予見性の向上と質の向上を図るという取組課題を掲げています。

開発ラグ※1
当該年度に国内で新規承認申請された新薬について、米国における申請時期との差の中央値

審査ラグ※1
当該年度(米国は暦年)における日米間の新薬の新規承認された総審査期間(中央値)の差

ドラッグラグ※1
開発ラグと審査ラグの和

ドラッグ・ラグの解消に向けた取り組み

日本製薬工業協会(以下製薬協)は、未承認薬がもたらしている様々な問題を解決するため、未承認薬を開発する企業を支援する組織「一般社団法人 未承認薬等開発支援センター」を2009年に立ち上げました。
患者数が限られるような薬剤の場合、多額の研究費用と長い臨床試験実施という開発負担を製薬企業1社で背負うことは大変厳しいので、未承認薬の開発に取り組む企業に対して、その研究から製造販売における各段階において技術的な支援や研究開発資金の援助などを行うことで、未承認薬を使えずに治療を断念せざるを得ない患者さんや、個人輸入など高額な治療費を個人負担している患者さんに寄り添い、必要な医薬品を必要な患者さんのもとに届けるため取り組んでいます。

また、PMDAでは、ドラッグ・ラグの解消に向けて、次のような取り組みを進めています。

ドラッグ・ラグ解消に向けた取り組み一覧
  • 国際共同治験の促進
  • 治験・臨床研究ネットワーク体制の推進
  • PMDA審査員の増員

国際共同治験を促進することで、個々の国ごとに治験実施・申請を行うよりも格段に効率よく承認申請が行えることが期待できるため、諸外国に比べて時間がかかることが問題とされてきた新薬承認の本質的解消につながります。
そのため、平成18年度より国際共同治験に関する対面助言の予約申し込みに際して優遇措置を講じ、国際共同治験を前提とした治験デザインや治験データの取り扱いなど個々の事情に応じた相談・アドバイスを行うことで製薬企業の国際共同治験への参加を促しています。

また、厚生労働省医薬食品局「国際共同治験に関する基本的な考え方について」において、どのような領域においても国際共同治験を実施することは可能だが、希少疾病等の国内で大規模な検証試験を実施することが困難と考えられる疾患であれば、より積極的に国際共同治験の実施を検討すべきであるとしています。

多くの製薬企業においてオーファンドラッグの研究開発に重点が置かれていることからも、薬事職においては国際共同治験に関する知識や経験がより重要な要件となっています。また、これまでは米国やEUなどとの国際共同治験が中心でしたが、近年では日中韓などの東アジア地域での国際共同治験も増加してきています。東アジア地域で罹患率が高い胃がんや肝炎などの疾病領域に関する医薬品など、東アジア地域での国際共同治験実施が求められることから、薬事においてはより広い視野が求められています。

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